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青森地方裁判所 昭和48年(わ)27号 判決

本籍

八戸市大字本鍛治町三番地

住居

八戸市大字糠塚字下道七番地の五八

仕出し業総合結婚式場経営

野月留蔵

大正一三年八月六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官佐藤美津次および同服部三男雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

1  被告人を懲役八月および罰金六〇〇万円に処する。

2  右罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

3  ただし、この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、八戸市大字本鍛治町三番地に仕出し部を、また、同市類家玄中寺下二八番地の五に野月会館を有し、弁当、仕出しおよび総合結婚式場経営等の事業を営んでいたものであるが、所得税を免れる目的で、売上および雑収入の一部を除外するなどの方法によって得た裏資金を架空名義で預金するなどの不正の手段により、

第一  昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの被告人の実際の所得金額は一九、六五八、五八四円で、これに対する所得税額は九、〇七二、六〇〇円であるにかかわらず、昭和四五年三月一〇日、八戸市大字番町一〇番地の四所在の所轄八戸税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額は二、九七二、一九八円で、これに対する所得税額は六二一、〇〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額九、〇七二、六〇〇円との差額八、四五一、六〇〇円をほ脱し

第二  昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの被告人の実際の所得金額は二五、〇九三、五三二円で、これに対する所得税額は一二、〇〇八、〇〇〇円であるにもかかわらず、昭和四六年二月二二日、前期八戸税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額は二、九一六、六二五円で、これに対する所得税額は四六六、一〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額一二、〇〇八、〇〇〇円との差額一一、五四一、九〇〇円をほ脱し

第三  昭和四六年一月一日から同年一二月三一日までの被告人の実際の所得金額は二七、八三四、四六六円で、これに対する所得税額は、一三、一八一、一〇〇円であるにもかかわらず、昭和四七年三月一四日前記八戸税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額は二、七七〇、二一二円で、これに対する所得税額は三五一、八〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額は一三、一八一、一〇〇円との差額一二、八二九、三〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告入作成の上申書一五通

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書二三通

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、根元節、米内修一、釜石俊造、内田定三および 塚松男作成の各上申書

一、野月八重、野月宗雄(二通)、野月与三郎、根元節(七通)、堀昭三、稲葉正夫、笠井ケイ、菊地岩男おび内田定三の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、根元節の検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書三通

一、被告人作成の所得税の修正申告書(騰本)三通

一、大蔵事務官作成の差押てん末書(三通) 領置てん末書(二通)、臨検てん末書(四通)、検査てん末書(預り金調査書、簿外仕入額調査書、野月会館の売上除外額調査書、簿外預金およびその受取利息の調査書、減価償却費(建物備品)調査書、銀行調査書類、アルバイト賃金パートタイマー賃金水増額調査書ならびに簿外給与簿外退職給与支給額調査書

一、佐々木保雄作成の照会に対する回答書

一、前原義一、村井吉重および栗橋岩吉作成の各「取引内容の回答について」と題する書面

一、押収してある金銭出納帳三冊(昭和四八年押第二六号の一ないし三)、手帳一冊(同押号の四)、出納帳一冊(同押号五)、金銭出納帳七冊(同押号の六ないし一二)、売上日報一三冊(同押号の一三の一ないし一二および一四) 手帳一冊(同押号の一五)、仕訳メモ帳二綴(同押号の一六および一七)ならびに所得税確定申告書三通(同押号の一八ないし二〇)

(法令の適用)

1  判示各所為について 所得税法第二三八条第一項(懲役刑と罰金刑を併科)

2  併合罪の処理について 刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に加重)、第四八条第二項

3  労役場留置について 刑法第一八条

4  懲役刑の執行猶予について 刑法第二五条第一項

(裁判官 立原彦昭)

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